みなさん、こんにちは!トラ・レポ(トランジションセンターReporter)の禰占です。
8 月 29 日(土)に行われた、「【大丈夫!コロナ禍の教育】Vol.3 オンライン学習を組み込んだウィズ/ポストコロナの学校教育」の講座を受講しましたので、体験レポートさせていただきます。講師は、学校法人桐蔭学園 理事長、桐蔭横浜大学 学長・教授の溝上慎一先生です。講義では、新型コロナウィルスによって大きく変容した社会、学校教育と今後の展望についてお話しいただきました。
新型コロナウィルス感染拡大の影響による学校の休校措置により、教育の ICT 化の必要
性を多くの人が痛感し、これまで後手に回っていた ICT 環境の整備は前倒しで進められる
ことになりました。ICT を活用したオンライン学習の必要性が指摘される一方で、対面学習
の良さが改めて理解されるなど、コロナ情勢は保護者や子ども、教員の方々に新しい教育の
在り方を考えさせる機会となったに違いありません。一方でオンライン学習はコロナ禍の
緊急避難的な対応であると考えておられる方もいます。しかしながら世界に目を向けると
オンライン学習は日本よりも格段に進んでおり、今後日本でもその活用はますます進んで
いくと考えられます。オンライン学習にはさまざまな形態がありますが、溝上先生が講義内
で紹介されたのが反転学習です。反転学習とは、従来教室の中でおこなわれてきた授業を生
徒・学生がオンラインで視聴し、教室ではそのあらかじめ学んだ内容をもとに知識の確認や
定着、活用、さらには協同学習など、アクティブラーニングを行っていくような授業形態の
ことです。近年では理数系の科目中心に導入が進んでいます。
溝上先生は、コロナ情勢が落ち着いた後も従来の対面授業に完全に戻ることはなく、対面
の授業とオンラインの授業とを組み合わせたブレンド型学習という形態が進んでいくので
はないかと予測されます。ブレンド型学習においては、たとえば対面の授業で授業内容につ
いていけない生徒・学生が、オンラインのコンテンツを繰り返し視聴することで理解の遅れ
を補完するなど、個々の学生に応じたきめ細かな対応が可能になります。また放課後や休日
にほかの学校や地域の生徒や大学生と探求的、プロジェクト的な学習をおこなうといった
こともオンライン学習ならば可能になります。オンライン学習の環境があれば、個々の学生
に応じた多様な選択肢を提供できるのです。この結果、学習は個々の学生に応じて個別最適
化され、場合によっては飛び級制などカリキュラム自体の個別化までもが生じていく可能
性があります。
一方、オンライン学習は生徒や学生の主体性に相当依存して取り組まれる学習であるこ
とを理解しておくことが重要だと先生は指摘されます。実際に今回一斉休校となった際、一
部の生徒・学生は自律的に学習に取り組んだ一方で、学習に対する意欲を急激に低下させた
生徒・学生の存在が指摘されています。個別化がすすむということは、生徒・学生の主体性
によって学習成果に大きな差が生じる可能性があるということです。
コロナ禍では当初、各家庭のデバイスの保有状況や ICT 環境の差が問題視されていまし
た。このような物理的な環境を整備することは急務ですが、単に ICT 環境を整備しただけ
で学力格差が解消されるということはおそらくないでしょう。オンライン学習が発展する
ことで多様な選択肢を生徒・学生に提供することが可能になる一方で、彼らの主体性の問題
は可視化され、ますます問われていくのだと思います。子どもをもつ親として子どもの主体
性を注視していく必要があると改めて自覚した講義内容でした。溝上先生ありがとうござ
いました。
※主体性をはぐくむ内容については、溝上先生が以下の講座でも講演されましたので、
8月9日の講座レポートも併せてお読みください。
「保護者の安全基地を土台としての子どものチャレンジ―自己肯定感ではなく主体性を育てよう―」の講座受講レポートはこちらから
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